2024年 中山道甲州街道キャノボ(中央道キャノボ)

前回の2月の最短距離キャノボの達成からわずか4カ月。今までのペースだとキャノボはだいたい年に1回か多くて2回だったのだけど、直前の最短距離キャノボがあまりに神経戦だった。キャノボ中に温泉に入ったりとそれなりに旅を楽しんだのだけれど、「とにかく何も考えずに思いっきり走りたい」という渇望は最短距離キャノボを達成した時から果てしなかった。仕事もそれほど忙しくなくトレーニングを続ける余裕があったので、大阪東京でまだ走った事のないルート、JRの中央本線や中央自動車道の元となった、大阪諏訪間を中山道、諏訪東京間を甲州街道を走る、中央道キャノンボールにチャレンジする事にした。

と言っても逆風では達成確率は低くなるし、条件の良い時にやりたいのは山々なんだけど、中央道は山岳キャノボなので風の影響は受けにくい。東海道キャノボは主に海沿いを走るので西風や東風の影響を受けやすく、うまく日を選べば追い風アシストを受けることもできる。中山道や中央道の山岳キャノボは北風の影響が強いので、なるべく風のない穏やかな日が向いている。勿論追い風アシストに頼れない分走力は必要になるのだけど。とにかく自分は暑いのが苦手で、この時までに達成しているキャノボ8回のうち3回は2月に走っている。最長距離キャノボの中山道は10月頭にトライしてそれでも暑すぎて失敗してその3週間後に達成していた(中山道キャノボ参照)。6月初旬にやってしまわなければ10月以降までできないと思っていたので、ほどよくX(ツィッター)のチャリ仲間が煽ってくれたので便乗する形でバタバタと出走を決めた。風予報は東風基調だったのだけど風力は強くなかったので、それほど心配していなかった。そしてこの時「雨ならやらないんで」というのが後々の強烈な伏線となるのを本人は知る由もなかった。

持ち物、装備は中山道キャノンボールをご参考に。キャノボの装備として自分的には完成しているので、服装を予想気温に合わせて変更するくらいです。

という事でルートから。全てを中山道に準拠するなら美江寺宿から名鉄岐阜駅の横を通り木曽川の北を通るルートを取るのだが、今回は中央自動車道やJR中央本線に準拠した中央道キャノボなので中央自動車道と同じく下街道を通ることにする。hideさんやにんにんさん等、言わずと知れたキャノンボーラー猛者たちの走行記を拝見し、ルートを参考にする。今回は次の地図の赤いルートを通る事にした。

名古屋の3つの大きな川、揖斐川、長良川、木曽川に架けられている橋は限られているので、効率を考えるとどうしても走る事のできるルートは限定されてくる。地元だとどの道がこのくらいの時間帯だと渋滞するなどの情報は試走を繰り返す事でよくわかるのだが、遠方でそこまでの実走をできない場合はなるべく大きな道を通る方が迷う事もなく効率が良いようだ。

キャノボ中の食事、キャノボではとにかくコンビニ休憩などせず、コンビニでは食糧と水分の補給だけで走り続けるのが達成のコツ。というのは比較的距離が短い東海道キャノボでも、全体で3時間強信号待ちがある。信号停止中にまんべんなくパンやおにぎりを食べるのが一番ロスが少ない。おにぎりは袋を剥いたり海苔を装着したりが面倒だし、一口で口の中に放り込んで走りながらモグモグするには少し大きい。そうするとほぼ薄皮アンパン類になるのだけど、甘すぎて飽きてくる。今回はグルメシリーズ(甘くない)を事前に買い込んでスタートした。コンビニではまず売ってないけど、最初の20個だけでも事前に調達して、食べるのを凄く楽しみにしていた。

キャノボを大阪→東京、東京→大阪と方向を交互に繰り返してる自分としては、今回は大阪スタートの順番。自宅から大阪元標まで10kmしかないので、自走でいつでもスタートできるのが大きなメリット。寝る前に天気を確認すると降水確率は諏訪湖以降で40%、それも1mm未満の雨なんで霧みたいなものと考え決行する事にした。3時半に起きてトーストを1枚とバナナを1本。当然ながら飼い犬の柴犬、梅が朝ごはんご一緒しますわ~って起きてくる。でもそれだけじゃ全然足りないのでコンビニでサンドイッチを追加。東京発だとビジホで思う存分朝ごはんたべれるのだけれど、自宅出発の場合はこの部分だけがデメリット。

コンビニで5時に追加朝ごはんを済ませ、出発地点の大阪道路元標までゆっくり走って5時40分前に到着。今回はお見送りの人が誰もいない。少し寂しいけれど、最初のキャノボはツィッターもやってなかったし、LINEでモニグロ(行きつけのカフェ)のグループに報告しただけだったな。記念撮影をし、X(ツィッター)に出走報告とGoogleMapの位置情報共有をツィートして、5時45分に出発。

今回は諏訪湖まで中山道なので、淀川CRを通るルート。東海道フルR1(鈴鹿越え)もこのコースなので、むしろR163から清滝峠を越えるより淀川河川敷を走る事の方が多いかもしれない。さすがに夏至に近いだけあって、出発の時から既に明るい。大阪市内は信号が多くてこの時間でも結構ひっかかるのだけど、焦らず行きます。淀川河川敷に入ると1時間くらい全く休憩できない(=信号がない)からね。

時刻は6時ちょうど、いつもどおり淀川CRを走るべく城北公園通りから毛馬閘門の先で淀川河川敷に向かう。桜の宮高校の横でFATバイクがメタルクワガタと格闘している。いやそのタイヤ幅絶対通られへんやろって思いながら、待っていると時間が潰れるので横を担いで越えて淀川サイクルロードへ入る。栗東のR1とR8の分岐までのコースはOTさわやかキャノンボールと同じだけど、あの時に較べて遙かに明るい。暗いと道幅がすごく狭く感じるが今回は走りやすい。淀川河川敷を35km/hくらいの巡航速度で走り、桜出会い館で写真を撮る。煙突から上がる煙は真っ直ぐでほぼ無風。宇治川河川敷で何か地面に置いてる人がいたのでパンク修理のロードバイクかなと思っておはようございますと声をかけ、挨拶をかわす。自転車じゃなくてラジコン飛行機を持った人だった。挨拶を返してくれるのはとても嬉しい。

京阪本通り下のグラベル区間を通過。前日の雨の影響か地面が緩んでいて、粘度質でブレーキに絡む。7時16分、観月橋に出た所の信号が青だったので横断歩道を渡って歩道の自転車道を走る。もう7時を過ぎているのでわりと人が歩いている。いつもどおり六地蔵から名神高速横の道に入る。ここは東海道57次をトレースするコースで名神高速は旧国鉄東海道線跡に敷設され、起工の地の看板がある。

今回はスピード重視で髭茶屋追分は通らず、ローソンの横から名神高速をくぐる最短コースを通りR1の歩道に合流する。左車線に渡るために道路を横断しようとするが信号がないし横断歩道もないので、車が切れるまで40秒ほど待つ。ブレーキ回りが泥をかみ異音がするので、逢坂の関のトイレで水を両手で汲んでブレーキにかける事を何度か繰り返す。

国道1号は土曜日の朝にしては割と混んでいる。草津あたりから信号が少なくなり順調に進む。ただ何かサドルの真下のあたりで時々異音がなるのでコンビニで水を買ってちゃんと洗おうと思う。10時すぎでガーミンの温度計はもう30度を超えている。ボトルのポカリもなくなりかけてるので8号線から分岐した少し先のセブンイレブン米原一色店にピットイン。天然水550mlを買ってブレーキを洗う。後ろブレーキは泥の中に小石が入っていてこれが異音を鳴らしていたみたいだ。パンはまだまだあるけど少しづつ薄皮パンが減ってサコッシュに余裕ができたので2個追加。トイレもすませ7分20秒の滞在の後、10時27分に再スタート

天気が良くて暑いけど気持ちいい。関ケ原駅を10時50頃通過。出発からの距離132.5km 経過時間5時間5分、グロアベは26.1km。キャノンボールをする時はグロスアベレージさえわかれば進捗表など必要ないので、常にサイコンのオートストップをオフにして運用し、グロアベがわかるように表示している。

大阪↔東京キャノンボールでは、どのルートを通っても揖斐川、長良川、木曽川を通る事になる。江戸時代の東海道では3つの川を渡してもらうよりは船で、という事で七里の渡しという名古屋から桑名までの海路が一般的だった。中山道は内陸部を通るのでそれぞれの大きな川がわりと離れている。岐阜市は結構都会で、どこまでいっても道が狭く信号も多く、また昼間の時間帯なので道路も渋滞している。またどこまで行っても市街地なので日陰がない。木曽川を渡ると山が見えてくると思っていたけど、全然見えてこない。延々と交通渋滞の市街地が続いていく。これだと木曽川右岸のサイクリングロードを通った方が快適だし速いだろうな。東海道キャノボでは静岡県が横に長いので無限静岡というが、浜松と静岡では景色も全然違うし途中走りやすい所もいっぱいあるので自分的にはあまり悪い印象も無限という印象もない。それに較べて岐阜県は道が狭く交通量が多くどこまでも同じ景色の、本当に無限岐阜やな。その上暑いのでかなり辛かった。

道路標識に小牧の文字が見え始めてしばらく進み、暑さにヘロヘロになりながら12時41分、ファミマ小牧岩崎店でポカリといろはすを購入、いろはすは半分頭からかぶる。暑さは少しマシになった。クリームパン5個入りを買い足し5分30秒後に出発。ようやく遠くに山が見え始め、あそこまで行くと涼しくなるはず、と自分に言い聞かせて無心に漕ぐ。中央自動車道の高架をくぐり、R19の交差点に到着。宇津々峠はR19でトンネルが越えられるが、標高差もほとんどなく(清滝峠と清滝トンネルのような感じ)、R19に入らす直進して旧下街道の県道508(旧R19)に入る。峠までの5kmは平均勾配3.9%の緩やかな登り。
集落を抜け生コンクリート工場の横を通り過ぎゆるやかに登っていくと、ほぼ何もない宇津々峠に着く。昔は交通の要衝としてさぞ栄えたのだろうけど、見どころもなくただの広い道で、全く車も通らない。わざわざ峠に上がる必要もないだろう。
ほどなくR19に合流する。R19は別名木曽高速とも言われ、信号が少なくスピードを出せるので高速代をケチるトラックが多い結構危険な道だけど、もう何度となく通っている勝手知ったる道なので割りと平気。

13時33分、宇津々峠からの豪快な下りを走っていくと誰かがスマホを構えてる!!迎撃だ、これは嬉しい。ツィッターつながりのシュナちゃんのパパがシュナちゃんと共に迎撃に来てくれた。手を振ってこたえて通り過ぎたが信号が赤になったので信号待ちしていると追いかけて来てくださった。差し入れの冷たいゼリーをいただく。暑かったのでめちゃくちゃ美味しかった。ありがとうございます。

ご機嫌で走り慣れたR19を走っていく。山の中を走っていくのだが真上に木が生えているわけではなく、直射日光が当たるのでひたすら暑い。土岐のR21合流を13時58分に通過。出発して8時間13分が経過した。特にトラックに怖い目をする事もなく交通渋滞も道路工事もなく、勝手知ったる瑞浪、恵那と通過し、中津川を15時12分に通過。239.6km、グロアベ25.22km/h。ここで少し考える。今回の行程553km、24時間達成のための要求グロアベは23.04km/h。さあどうしよう。ここは与坂の交差点。次の落合宿から右に曲がり馬籠宿、馬籠峠、妻籠宿を通っても間に合いそう。しかし暑い。まだガーミン読みで30℃以上ある。ここは馬籠峠を通らずに今のペースで直進してトータルのグロアベ25km/hなら22時間切りを達成できる。今回はタイムを優先させよう。落合の交差点で馬籠峠に上がらずR19を直進する。結果的にこの判断が今回のキャノンボールを達成させる事になった。

また飲み物がなくなったのでファミマ中津川落合店で補給。いろはす540を買って半分頭からかぶり、オレンジ100も一気にのみ、ポカリも追加。喉の渇きはおさまらない。滞在時間5分46分で出発、15時36分。ちょっと一息おやつでも食べたかったが、せっかくだし奈良井宿に行ってからお店に入って休憩しよう。
しばらく走るとようやく温度計が30℃を切るようになってきた。南木曾町、中間地点の寝覚ノ床の上松町、友人のじ~さんの住んでる木曽福島を淡々と通過。涼しくなったのは良いがだんだんと雲行きが怪しくなってくる。とうとう木祖村あたりでぽつりぽつりと降り出してきてしまった。


一旦の最高点、鳥居トンネルの手前で雨はかなり強くなりつつある。標高997m、時刻は18時9分。日没までまだ時間があるのでだいぶ明るいはずだが曇って薄暗くなってきた。
経過時間12時間24分、312km、グロアベ25.16km/h。ここからは塩尻峠を登ったら下り基調となるので時間的にはまず大丈夫だが、雨が心配だ。路面がウェットになっている。トンネルの入り口でウロウロする。どうしようか。とりあえずトンネルの写真を撮る。路面も濡れてるし少し狼狽しながら、安全をとって鳥居トンネルは歩道で通過する事にした。鳥居トンネルの歩道はこの時初めて走った。さすがに人は歩いていないが、歩道はとても狭くてスピードが出せない。トンネルの距離1.8kmをかなりゆっくり通り抜ける。

鳥居トンネルを抜けると、あろう事か土砂降りになっいる。ここまでの雨は予想してないのでカッパは持ってきていない。防寒用のジレとウィンドブレーカーを上に着て、トンネルから下り始める。水が道路を川のように流れていく。奈良井宿までの1.4kmがもの凄く長く感じた。奈良井宿ではとりあえず水飲み場の屋根の下で雨宿り。沸かしてのんでください、の湧き水をいつものように3杯ほどひしゃくでそのままいただく。いつ飲んでもまろやかで美味しい。さて、どうしよう。向こうの方、塩尻に夕焼けが見える。夕焼けは天気がよくなる兆候。これは雨は降り続くまい。意を決して雨の中を走りはじめる

315.7km地点の奈良井宿を到着から10分ほどの休憩で18時31分に出発、経過時間は12時間45分、グロアベは 24.746km/h。全身びしょ濡れ、靴も中迄びしょ濡れで寒い。雨はやや小降りになって先ほどみたいに川のように水が流れる事もなくなったので、奈良井から塩尻までの登り返しでここぞとばかりに踏んで身体をあたためる。下りでももちろん踏む。踏まないと寒いから。食糧補給が足りてるから出来る技だな。
どんどん小降りになり、洗馬宿までくるとほぼ雨が上がった。塩尻の向こうにはやはり夕焼けが出てる。そうか、やはり鳥居峠のあたりに低気圧がいたんだな、と思い返す。中山道TOの調査の時、本走の時、また中山道OTの未明のDNFの時と3回お世話になっている洗馬宿のローソン塩尻宗賀店にピットイン。ここは店舗とは別に大きなイートインコーナーがあり、コインランドリーやシャワーもある。雨は辛かったけど、これだけで抜けられたのはありがたい。とにかく寒いが、まだ冷房を入れてなくて助かった。もちろんDNFする気はこの時は全然なかったので、にんにくラーメンにおにぎりに暑いお茶、タオルを買いジャージの上から身体を拭く。Xつながりのシンゴさんから、「この先天気悪そうですね。お気をつけて」のメッセージをいただき、雨雲レーダーを確認する。雨は局所的で降っても長くは続かないようだ。外に出ると風が身体に当たって寒い。とにかく漕いで身体を暖めなくては。エネルギーは十分だ。塩尻峠に向かって走り始める。コンビニの滞在時間27分。コンビニにこれほど長時間滞在したのは初めて。もう普通に達成できればいいや、としか考えていない。時刻は19時28分、スタートからの距離333km、グロアベは24.2km/h

ひたすら身体を温めるために漕ぐ。実は寒さ対策のぶん回しが結構グロアベを稼ぐのに役に立つ。平出古墳群への2段階右折をしばらく待つがいつまでも変わらない。あれ?押しボタン式か。押すとほどなく信号は青に変わった。いつもの道で旧中山道に入り、塩尻峠に向かう道を登っていく。もうすっかり温まって汗をかくくらいに体温も回復してきた。R20に合流し、おなじみ焼き肉屋の前を通って標高1012m、今回の旅の最高地点を超え、塩尻峠の歩道橋に達する。路面は濡れているが雨は降っていない。諏訪湖の夜景が見える。綺麗だな。街の灯が見えた所の写真も撮っておけばよかった。少し急な下り坂を降り、岡谷の街中へ入っていく。岡谷の町は降っていないけど路面がぬれている。雨が通り過ぎたのかな?思う間もなく、諏訪湖沿いで雨がぽつぽつと降り出した。夜の上に雨が降っていて走っていてちっとも面白くない。でもそのうち止むだろうと考えて先へ進む。
後からおもえば岡谷でやめておけばよかった。でもこの時点での天気予報はやはり局地的で、キャノボ虎の穴の仲間のじ~さんからツィートが来るが、雨雲レーダーは赤色だけど走っていれば1時間もかからず抜けられる範囲で、ずっと降り続く予報ではなかった。

その時は朝まで、まさか東京まで降られ続けると知る由もなかった。とにかく先へ、
雨雲から逃げようとばかり考えていた。しばらく走ると県道はR20に合流。交差点は左だけに横断歩道があり、右側は横断歩道がないパターン。自転車は2段階右折しないといけないので赤になったばかりだと先に横断歩道で右へ渡っておいて次に青になったら向こうへ渡って走り出す、という時間短縮技ができない。その場合は右へ横断のあとしばらく押し歩いて道路を横断するという方法はあるが、道路行政は本当に自動車中心にしか考えていないな。コースプロファイルでは諏訪湖から富士見町まで22kmほどを獲得標高315m。
ほぼ平坦に近いかやや登りの道で、そこからは笹子トンネルの手前、甲府市まではずっと下りとなる。雨はどんどん強くなる。X(ツィッター)つながりの六花さんが迎撃に来てくれるらしい。待機場所をDMくれていたのだけど、雨で見ている余裕がなかった。どこで会えるかな?と考えながらひたすら漕いで行く。ただただ雨。登り基調で漕ぎ続けるので寒くないだけが幸い。なんとなく登りが多くなってきた。どこをどう走ってるかも全然わからない。そうこうするうちにコンビニ前で手を振る姿が!六花さんだ!!富士見峠の少し前のコンビニで待っててくれたのだけど、土地勘が全然ないので今がどこかも今いちわからない。差し入れ詰め合わせをビニール袋に入れてくれてたのでありがたく頂戴し背中ポケットに入れる。応援に来てもらえるとものすごく元気が出る。これはずっと孤独な闘いのキャノボをやった人にしかわからないかもしれない。頑張ります~と言って出発。

少し登ること10分弱、標高955mの富士見峠を21時24分に通過。下りがはじまる。
甲府市まで46km、少しは登りがあるが、トータルで約850m分の下り。交通量も少なく道も悪くない稼ぎどころのはずだが、雨がどんどん酷くなる。もうセンターラインさえ見えない。路側帯の白線を頼りに土砂降りの中を下っていく。これは絶対無理だな。どこでDNFしてどうやって撤退しよう、そればかり考えていた。とにかく人けのある所まで降りないと。22時過ぎに土砂降りで何もない真っ暗の中、煌々とそびえたつセブンイレブンの看板。吸い込まれていくトラック。どうしよう、寄るか。でも寄ってどうなる?タオルで拭いたところで出ていく先は土砂降りの中。どう見ても周りに何もありそうもないし。帰ってから地図を見ると、白州のあたりだった。サントリーの工場があってポットスチルがある。いつか写真を撮ろうと思っていた、あそこか。でも酷い雨でセブンイレブン以外には何も見えなかった。とにかく街のある所、宿泊施設のある所まで降りよう。

22時過ぎ、大きな川を渡る所で道が大きくカーブし、雨も少し小ぶりになってきた。ゴールまで150kmと少し。待てよ、150kmしかないんだったらDNFして撤退方法を考えるよりもゴールまで走ってしまった方がいいのではないか?もう400kmも走ってるし、あとたった150kmや。この話を後日したら、150kmってビワイチやアワイチと同じやで?普通雨でアワイチしに行かんやろと言われて、それもそうやなと笑ってしまった。ただこの時はあと150kmしかないとしか考えなかった。韮崎駅の近くを通過、雨が小降りになりコンビニを探しはじめる 。突然片側2車線の綺麗な道になり、ずっと真っ暗な田舎道だったのが急に開けて大きな建物が見えだす。22時半、ガストがある!寄って何か食べようか。でも全身ぬれねずみでタオルもないし、まずコンビニだな。しばらく走ると道が乾いている。ようやく降水帯を抜けたか。とうとう天候に勝利したな。415km地点のローソン甲斐竜王バイパス店に到着。自転車をこいでいないと全身びしょ濡れの身体が風で冷やされて寒い。店内に入りタオル3枚組みとカレーヌードルとゼリーを買う。この時点で既にキャノボ達成は頭になく、撤退作戦としか考えていなかった。お湯を入れてる間にウィブレとジレを脱いでジャージの上からタオルでひたすら身体を拭く。ウィブレとジレもなるべく水分をふき取る。イートインが無く、仕方なく店外でラーメンを食べる。風が寒いがカレーヌードルで身体も温まった。トイレに行き、出発しようとサイコンを見るとまだグロアベが24km/hある。要求グロアベは23と少し、これ全然間に合うやん。じゃあやっぱりちゃんと走ろう、と再度気合を入れて走り始める。コンビニの滞在時間は24分27秒。

コンビニを出てすぐ、いったんR20から離れて直線的に甲府市内を抜けるのだが、少しトリッキーな斜めのショートカットの道を見落として通り過ぎたので、次の交差点で左折する。しばらく行くとまた雨がパラパラと降り出した。時間にして雨が止んでいたのは20分くらいだった。貢川(くがわ)沿いの細い道を通って荒川を橋で渡り、青沼通に入る。青沼通からR20に再度合流した所から登りがはじまり、新笹子トンネルまで18.5km、獲得標高474mの登りとなる。R20はずっと片側2車線の綺麗な道で、夜間なので交通量も少ない。それほど急ではないけれど、前方に山々が連なっているようだ。並行して少し遠くに中央自動車道の明かりが見える。笹子トンネルは高速も国道も近くにある筈なので、だんだんと高速が近づいてくるとそろそろ登りも終わりかな、と思う。中央自動車道のインターチェンジを超え橋を渡ると片側1車線となり、トンネルが近づいてきている事を感じる。トンネルだ。笹子トンネルかな?記念写真を撮って走り出す。トンネルは入口から中が曲がっていて向こうが見えなかったが、曲がるとすぐに出口。あ、これじゃなかったのか。更に4kmほど、200mくらい登って洞門を抜けると新笹子トンネル入り口が姿をあらわす。時刻は0時32分。写真を撮ってツィートする。

そのツィートにいただいたコメントの雨雲レーダーの写真と、更に1時間後の雨雲レーダーの写真、そして赤丸と矢印が自分の走った軌跡。どうやら雨雲と一緒に移動していたようだ。

新笹子トンネルは路肩も狭く片側1車線なので自転車で走るには怖いが、夜中なので交通量が少ない。3台ほど車を先に行かせたらトンネルの中で抜かれる事はなかった。トンネルの中は雨が止んでいる、なんて素晴らしいんだ。トンネルを抜けると下りがはじまる。大月の町はバイパスがあるのだが少し登らないといけないので、そのまま旧道を通り大月の街中を走る。大月の町を抜けしばらく真っ暗な雨の中を走っていくと、なんだか壁のような同じような景色をグルグル、グルグルと回っていく。いったいここはどこなんだろう?下り基調だがずっと土砂降りで、面白くもなんともない。後で地図を確認すると、相模湖周辺だったようだ。ずっと同じような景色だが登りが始まる。大垂水峠かな?下調べではたかだか300mくらいの登り、勝尾寺程度の雑魚やな。ゆっくり登っても20分程度だろうと考えてるうちに峠に到達し下りがはじまる。しかし土砂降りの雨で峠で写真を撮る気にもならない。残り56kmで3時間、要求グロアベ18.7km/h。やがて急激に開けて街並みが見え、それまで山の中で真っ暗だったのがとても明るくなる。八王子だ。ボトルが空になっていたので西八王子駅前で道路の向こう側だが自販機を見つけ、アクエリ500を購入する。時刻は3時10分、サコッシュの中にまだ薄皮パンが残っているが水没してふやけている。1個食べながら、これは水分も同時に補給できて効率いい、と思うがよく考えたら雨水を飲んでいるのと同じだった。幸いお腹はこわさなかったのでよかったけれど。雨は相変わらず止まない。虚無のまま漕ぎ続けると、誰かが交差点の前で声をかけてくれている。21時間切りでキャノンボールを達成している、ひがさんだ!!こんな早朝の雨の中、本当にありがとうございます。大げさでなく、この時迎撃に来ていただいてなかったら無事にゴールできていたかわからない。眠いとかそんなのでなく、とてつもなく疲労困憊していた。こうやって迎撃していただいて、ものすごくパワーを貰って運よく達成できたけど、DNFについて実に考える事が多いキャノボだった。

迎撃していただいた日野万願寺駅前交差点から残り35km2時間7分、府中からR20を離れ調布飛行場の北側を通るルートを取る。この時間帯ならR20のままでも時間は変わらないかも知れない。地元じゃないので現地調査がしづらいのが辛い所。少し複雑なルートをGoogleMapのペグマンで何度となくシミュレーションしているので、Naviに従い見慣れた道を走る。新宿駅到着4時53分、残り8kmを52分。このくらい余裕あるのが楽だな、と思いながらこんな時間なのに混沌とした新宿駅前を2段階右折する。雨の早朝なのにものすごく人がいる、それはいいとして、あちこちにゴミのペール缶やゴミが散らかっている。ここは日本なのか?信じられない。やたら外人もいてて、ここはニューヨークのスラム街か?と思う。道なりに走ればいいのだけど、GARMINの地図がここどこ?状態になる。道が多くて複雑な所は、GARMINのEDGE日本仕様の昭文社地図がいい加減すぎてまともにナビとして使えない。少し迷って新宿を通過する。その時のGPSログを下に表示するが、なんであんなものをガーミンは純正採用してるのだろう?あるべき道がなく、ないはずの道があったりして、自分がどこを走っているのかわからなくなる。詳しくはこの下のサイトに書かれているが、使えない地図のおかげで多くの顧客を失っていると思う。(2024年現在)

GARMIN EDGEの日本語版標準の地図を使うと迷う件はこちら。無償のOSMを使うと解消される。

http://blog.livedoor.jp/wason/archives/20230410_cyclespice_garminedge1040.html

衆議院宿舎前を左折して斜めにショートカットの予定が半蔵門前まで行ってしまった。ナビの残距離がおかしい。いつの間に九段下から神保町へ大回りするコースになってる。もうナビは当てにならない。最悪皇居を左回りに一周してもこの時間なら間に合うだろう。止まっては何度もスマホのグーグルマップで確認する。内堀通り、なぜかridewithgpsで道路に沿うでルートを引けなかった。特に通行禁止でもないのに何かの結界?と思いながらシミュレーションで何度もペグマンをおいて確認していた気象庁前交差点を通過。


左折、ここでいいんだよな。曲がって次の信号にひっかかったのでまたスマホを取り出しグーグルマップで現在地を確認する。どうやら大丈夫。時間がギリギリ隊なら本当に焦っただろう。もうすっかり明るくなっている。JRの高架下をくぐり常盤橋を渡ると三越が見える。この方向から来るのは初めてだな。5時27分元標前到着、距離は553.3km。経過時間23時間42分。大雨の富士ヒル応援の中央道OTキャノボ、無事達成しました。

獲得標高が4151mになっていますが、荒天のため気圧センサーを使うガーミンの高度計はかなり狂います。同じコースを走っている他の人のデータや、自分の同じコースのTOのデータを見ると、獲得標高は4600m~4700mくらいが正しいようです。